どうやらパクられたかも。

新しい内閣になって、石破茂さんが、地方創生大臣という新しい部署の大臣におつきになられました。
先週の日曜日にNHKの日曜討論で、石破大臣は、
「経済の再生のためには地方の再生がなければならない。補助金や公共事業も必要だが、それをやってきて地方がこうなっている。地方の潜在力をどう引き出すかが大事だ」
と述べられていましたが、聞いていて私は、驚きました。
私の本をお読みいただいたり、講演をお聞きいただいた皆様でしたらご存じだと思いますが、私は常々、「今まで40年間ローカル線問題はいろいろ解決方法を探ってやってきました。でも、その結果としてローカル線が今こうなっているわけだから、やり方を変えなければならない。沿線地域を含めた可能性を引出し、需要を創造しなければならない。」と申し上げておりますし、ことあるごとにこのブログにも書いているのですが、石破大臣は、私と同じことをおっしゃられたわけです。
つまり、今までのやり方ではだめだ。今までの延長線上に未来はない。ということですが、石破大臣はいすみ鉄道の過去5年間のやり方を見て来られたのでしょうか。
なんだか、石破大臣にパクられた(持っていかれた)ように思います。
日本におけるローカル線問題は過去40年以上の歴史があって、全国的な問題として各地域でいろいろ解決策を探ってきているのですが、未だに解決していません。
ということは、国のトップにいるような偉い人たちがやっていたとしても、そのやり方ではダメなわけですから、私は「今までと違う方法でやりましょうよ。」と申し上げてきたんです。
だから、私がいすみ鉄道の社長に就任してからは、とにかく今までのやり方と違うことをやってきたんです。
1:女性をターゲットにする。
今までのローカル線は男性の趣味嗜好の対象でした。でも、それでだめになってきたのですから、私は男性相手じゃなくて女性をターゲットにすることが必要と考えました。それが5年前に始めたムーミン列車なんです。女性に乗りきていただく、「乗ってみたい。」と思っていただくことが活性化の一歩なんです。
2:訓練費用自己負担養成制度
資格を必要とする職業は、弁護士さんでもお医者さんでも会計士さんでも学校の先生でも、どの職業も自分の時間とお金と能力を使って(つまり学校で勉強して)資格を取得してから就職します。これが日本の常識です。
ところが、鉄道の運転士だけは、会社に入ってから資格を取らせるんです。
交通機関でも、飛行機、バス、船なども会社に入る前に資格を取得する。でも、鉄道だけは違うのです。
そういうやり方でローカル線はダメになったのですから、他の職業の常識と同じように、自分のお金と時間と能力を使って資格を取るシステムを導入したのです。
当初はいろいろ言われましたが、私にとってみれば当たり前のことを当たり前にやっているだけなんですね。ただ、それが今まで行われていなかったというだけなんです。
3:反近代化
日本の鉄道は昔から「動力近代化」の旗印の下で、新しい車両を次々と導入してきました。昔は蒸気機関車を追いかけて田舎の山の中までたくさん人でにぎわっていたのに、「近代化」の名の下にどんどん車両を新しくして、誰も行かなくなってしまったんです。そして、お客様へ良いサービスと思ってやっていたのに、地元のお客様まで乗らなくなってしまいました。だから、私は「近代化」に反していすみ鉄道の観光列車として、わざわざ古い車両(キハ52・キハ28)を持ってきて走らせているのです。近代化でダメになったのですから、それとは逆のことをしているのです。
4:お客様へ「お願いビジネス」をしない。
今までのローカル線は、「お願いしますから乗りに来てください。そうしないと私たちは廃止になってしまいます。」と言ってお客様に来ていただき、来ていただいたお客様に、「グッズを買って増収にご協力ください。」というような「お願いビジネス」をしていたように思います。でも、このやり方だと、ローカル線の職員はまるでbeggarのように思えてしまいますから、一生懸命働いても誇りが持てなくなる。つまり、会社に活力がなくなる。だから、私は乗りたくなるような列車を走らせて、入りたくなるようなショップを作って、買いたくなるような商品の品ぞろえを行っているのです。
5:ローカル線のブランド化
ローカル線の商品は「座席」です。1時間に1本、1両編成の列車が走っているわけですから、販売できる商品である座席数は限られます。つまり、ローカル線の座席は限定商品なのです。
また、ローカル線の座席という商品はお取り寄せもデリバリーもできません。商品が欲しければ、わざわざ買いに来なければならない。乗りに来なければならない商品であって、「買回り品」です。
商品数が限られていて、わざわざ買いに来なければいけないという2つの商品特性を兼ね備えているのがローカル線ですから、私は「ローカル線はブランド化に適している。」と考えて、安売りをしないビジネス展開をしているのです。
6:地域の力を掘り起こす
ローカル線が「お願いビジネス」をするということは、その地域の安売りをしていることになります。でも、ローカル線はどこでもその地域の宝を発掘するツールになりえる。なぜならば、都会の人間はみなさん「ローカル線への憧れ」と持っていて、「乗ってみたいなあ。」「行って見たいなあ。」と思っているわけです。だから旅番組でローカル線をやると必ず視聴率が上がるのです。
そういう都会の人たちの需要にどうやって答えていくかを考えることが、地域の力を掘り起こすということなんです。
でも、その地域に昔から住んでいる人たちには都会の人たちの気持ちがわかりませんから、東京育ちの私は、地域の宝物を都会の人たちに紹介する展開をしているわけです。今日と明日走るいすみ鉄道の「新米列車」などはその良い例で、わずか500円のおにぎり弁当を車内で販売したところで、鉄道としての利益には全く通じないわけですが、ローカル線の情報発信力を発揮して地域の宝物や力をご紹介することは、大事なローカル線の仕事であって、たとえ儲からないことでも一生懸命やらなければならないと考えているのです。
7:取り立ててみるところのない場所を観光地化する
富士山や風光明媚な海岸線、清流流れる渓谷がなければ観光地になれないのでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。日本全国、ローカル線が走る地域はたとえ単なる田んぼでも「絵になる」風景です。こういう日本の原風景が都会人が求めているものなのです。だから、そういう何でもない田んぼでも、上手にお見せすることができれば、たくさんの人に来てもらえるわけで、いすみ鉄道のやり方であれば、富士山がなくても海岸線がなくても渓谷がなくても、日本全国の単なる田舎が「絵になる」し、観光地になるということを証明しているのです。
8:田舎での思い出づくり
家族や友達同士で、田舎のローカル線に乗って思い出を作っていただく。そうすれば、その方々にとってのローカル線や車窓からの風景、途中下車して歩いた街並みや食べた料理などが思い出になります。つまり、ローカル線が走る地域全体が思い出になる。そして「ローカル線っていいよなあ。」という思い出を持った子供たちが10年後、20年後に大人になってこの国を支えていくわけです。
そういう地道な活動もやっていかないと、「ローカル線はバスで十分ですよ。」というような大人たちばかりを大量生産してしまいます。そういう大人たちばかりの時代が来ると、この国は新幹線と高速道路と飛行場だけの国になってしまいます。
「ローカル線はお荷物だ。」と考えるということは、その地域そのものも中央から見れば「お荷物」なわけですから、簡単に言えば「田舎はいらない。」という考え方になります。
だから、2040年には900の自治体が消えてなくなるといわれているわけで、もちろん房総半島の市や町も含まれています。
でも、田舎にはそれぞれの良さがあって、その良さは都会の物差しで測ることができない良さなわけですから、「いらない田舎」などないんですね。
ただ、どうやってその土地の宝物を発見し、力を出していくかその方法がわからないんです。
でも、そんな田舎でも、ローカル線が走ってさえいれば、いくらでも勝負に出ることができる。
これが私がいすみ鉄道で実践しているローカル線論なのです。
石破大臣がこの私のやり方をパクったかどうかはさておいて、いよいよこの国も、そういう点に目を向け始めたということは言えそうですから、石破大臣、ぜひいすみ鉄道の例を研究していただき、日本全体を田舎からよくしていきましょう。
ただし、何度も言いますが、すべての田舎が立ち直れるというわけではありません。
せめて、ローカル線を大切にしているところには、そのローカル線の恩恵を受けられるような仕組みづくりをしていただきたいと申し上げているのです。
ああ、今夜は熱く語ってしまいました。
お読みいただきましてありがとうございました。
【田んぼの中が観光地の実例】

[:up:] 1月の寒い日、田んぼの中に人だかりが。列車の写真を撮るカメラマンです。

[:up:] 3月に入り、少し菜の花が咲き始めました。やはり同じ場所にカメラマンがたくさんいます。

[:up:] こちらは真夏の炎天下。皆さん待ち構えています。
なぜだかわかりますか?
その答えは・・・

このポスターの写真を撮影した場所なんですね。
この踏切は鉄道写真家の中井精也先生が発掘してくれたポイントなんですが、田んぼの中の小さな踏切でも、こうやって観光地になるということなんです。
でも、この踏切は第4種踏切で、国交省の廃止対象踏切に入っています。つまり、警報機と遮断機を付けるか廃止するかを迫られているわけで、「安全、近代化」という、そういう画一的な行政の姿勢が、今まで、ローカル線をダメにしてきたのが1つの事実なんですね。
360度見晴らしの良いこの踏切に、警報機と遮断機を付けたら、それは野暮というものです。
私はそう思いますが、皆様方はどうお考えでしょうか。

引用元について:
こちらの記事はhttps://www.torizuka.club/2014/09/13/%e3%81%a9%e3%81%86%e3%82%84%e3%82%89%e3%83%91%e3%82%af%e3%82%89%e3%82%8c%e3%81%9f%e3%81%8b%e3%82%82%e3%80%82/より引用させて頂いております。