
低 迷
元選手・監督であり、現在は同社スポーツ推進局々長を務める瀬古利彦さんが会見したのですが、その悲痛な表情からは無念さがひしひしと・・・。
私自身、大学時代に早大の東伏見グラウンドで修行僧のような顔つきで黙々と走る瀬古選手を間近で見て以来のファンだっただけに、少なからずショックを受けました。
同陸上部は創部が1954年。 半世紀以上の歴史を持っています。
途中休眠状態の時期もあったようですが、瀬古選手が早大卒業時に監督をしていたのが早大OBだった縁で、中村監督共々1980年にエスビー入り。
同時に同期のライバルだった日体大の新宅雅也・中村孝生両選手も入社。
更に2年後には佐々木七恵選手も加わるなどトップ選手が次々入社、1984年から全日本事業団駅伝で4連覇を果たし黄金期を築きました。
しかし1985年に中村監督が釣りの最中に不慮の事故死。
更に1990年には北海道合宿からの帰途、選手を乗せた車が交通事故に遭遇・・・金井豊選手・谷口伴之選手らトップクラスの3選手とトレーナーを失う悲劇に見舞われてしまいます。
(個人的には、この事故が低迷の大きなきっかけになった気が・・・。)
2000年から実業団駅伝への出場はなく、選手数を絞って個人種目に力を入れましたが、北京・ロンドンと2大会連続オリンピック選手を輩出できず・・・現在の現役部員は僅か6名にまで落ち込んでいたようです。
さて、瀬古氏は会見の中で 「厳しい経営環境下、苦渋の末、廃部に至った」 と説明しましたが・・・エスビー食品がそんなに経営悪化しているなんて話、私は聞いたことがありません。
更に野球部やアメラグ、ラグビー等の団体種目と違い、基本的に個人種目であり部員数も少なく用具代もかからない陸上競技なのに、なぜ廃部に至ってしまったのでしょう?
そもそも企業がスポーツ・クラブを所有するのは、
◆ 社員の士気高揚
◆ 企業の宣伝効果と一流・大手というステータスの誇示
などが主な理由だと思われます。
(中には西武鉄道グループのアイスホッケーのように、オーナーの個人的な趣味で・・・というケースも稀にありますが。)
しかし現在は、経営者が投資家・株主に対してその効果を具体的に説明する責任を負う時代。
社員の士気高揚とか宣伝効果を数字で示せないと糾弾されますから、バブル期のような右肩上がりの時代ならともかく、経営環境が厳しい現在は企業が運動部を所有するには厳しいと言わざるを得ません。
つまり、話題性を当て込んでオリンピックのメダリストなど有名選手を入社させて創部しても、その注目度が下がれば維持が非常に難しい・・・つまり、企業がスポーツを長期的に支援しにくい時代になったといえます。
ここ数年、複数の種目で伝統ある有力実業団チームが廃部になっていることが、それを証明しています。
日本がオリンピックでメダルを獲得できる有望種目・・・柔道・レスリング・体操などの選手は殆ど企業に所属しているわけですから、今後選手たちの置かれる環境はますます厳しくなるのは必至。
今後もメダル獲得を期待するなら、我が国のスポーツ環境・システムを極端な企業依存からJリーグのような地域・コミュニティー全体で支えるスタイルに転換しなければならないでしょう。
メダリストをパレードやパーティーなどに引っ張り回し、栄誉賞を送ってハイ終わり・・・ではなく、彼らに憧れてその後を目指そうという子供たちをいかに継続して支援するか、が課題です。
またマスメディアも勝った時だけ持て囃すのではなく、継続して国民全体が注目する雰囲気・環境を作り上げないと、野球・サッカーのようなプロ組織を持たないマイナー競技は尻すぼみになってしまいます。
そろそろ企業だけでなく国民もアマ・スポーツに関する意識を変えなければいけない時期に来たようですネ。
・・・それにしても、可哀想なのは瀬古さん。
全盛期で金メダル間違いなしといわれたモスクワ五輪はボイコットで出場できず。
次のロス五輪は、その前後の国際大会は連戦連勝だったのに調整の失敗でメダルを逃し、現役引退してエスビー監督に就任した翌年には交通事故で主力選手を失った上に、今回の廃部。
これほど不運に見舞われたトップ・アスリートも珍しいのでは?
でも超一流アスリートだった瀬古さんのことですから、必ずや奮起して日本陸上界に更なる足跡を残してくれると信じて止みません。
選手共々新天地を見つけて、頑張ってください!
こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-11343124373.html?frm=themeより引用させて頂いております。

