
悪 筆
老若男女にかかわらず、ピアノを弾き始めた方の多くが、この曲を弾くことを第一の目標にしていることでしょう。
〝エリーゼのために〟
L.V.ベートーヴェンがこの作品を書き上げたのが、今から202年前の今日・1810年4月27日だったとされています。
あの厳つい顔(失礼!)のベートーヴェンのイメージからは程遠い(再度失礼!)切なくそして甘美な旋律は、ザ・ピーナツの 「情熱の花」 やザ・ヴィーナスの 「キッスは目にして」 など様々な楽曲に使われている、まさにピアノ曲の代表作。
この曲、私にとっても実に思い出深い曲なんです。
ただし、あまりいい意味ではないのですが・・・。
6歳からピアノ教室に通い出した私でしたが、野球第一・ピアノはその次の次・・・って感じの日常。
当然のことながら赤や黄色のバイエルをチンタラ弾いていた劣等生だったのですが、なぜか小学校3年生になった途端、急にこの〝エリーゼのために〟を弾きたくなったのです。
「どうしても弾きたいっ!」 って駄々をこねまくり、「アナタはまだそれを弾ける段階じゃありません」 とたしなめる女先生に 「いや、ボクなら弾ける」 と大見得を切った私。
結局先生が折れて、教則本を一旦中止してこの曲の練習を許してくれました。
でも人間って、自分からやる気を出すと進歩するもんですねェ。
ピアノピースの楽譜を買い込んで、鍵盤の前に2,3時間向かう毎日・・・結局ものの半月も経たないうちに弾けたんです!
教室で弾き終り、ドヤ顔で振り返った私が見たのは、先生の 「信じられない」 という引き攣った顔。
しかしその後先生との関係は一層ギクシャク、ますます練習に身を入れなくなった私が上達するはずもなく・・・要するに、私のピアノが上達しなかった原因は、この〝エリーゼのために〟にあったのです!
な~んて、結局才能がなかっただけなんですけどネ。
下の写真が、我が家に現存する当時の楽譜。
すっかり黄ばんでますが、ウラを見てみると値段が35円!
40年以上の時の移ろいを感じますネ。
さて、この名曲が捧げられた 「エリーゼ」 とは誰なのか?・・・これが長らく音楽界の謎とされてきました。
というのは、ベートーヴェンと交流のある女性にエリーゼという人物が見当たらなかったからなのですが・・・作曲から100年以上経過した1923年に、ドイツ人音楽学者マックス・ウンガー氏が
「筆跡鑑定の結果、エリーゼ(Elise )はテレーゼ(Therese )と読める」
と論文で発表。
実はベートーヴェン、相当な悪筆で写譜屋泣かせだったことが知られていました。
おそらく出版元の読み違えだろう、というのです。
(※ただし原譜は紛失しており、確認はできません。)
テレーゼ・フォン・ドロスディク夫人は実在の女性で、実際この曲の楽譜は彼女の手紙箱の中から発見されたものであり、しかも彼女は当時40歳のベートーヴェンから18歳の時に求婚されたそうな。
曲を捧げたにもかかわらず、残念ながら彼はフラれましたけど。
こんなエピソードを知ると、イ短調のこの曲のメロディーがより一層哀しく聴こえてしまいますネ。
これが真実だからといって、今更曲名を〝テレーゼのために〟に変えようという話は聞きません。 もしこの説が真実だとしたら、ベートーヴェンの心の傷を蒸し返すことになりますしネ。
ところが3年程前、ドイツの音楽研究者クラウス・マルティン・コピッツ氏が、
「エリーゼは、ベートーヴェンのオペラ作品にも出演したテノール歌手ヨーゼフ・アウグスト・レッケルの妹で、当時エリーゼと呼ばれていたソプラノ歌手エリザベートの可能性が高い」
という新説を発表。
はてさて、真実は?・・・顔に似合わず(またまた失礼)恋多きベートーヴェン自身に、あの世で聞いてみるしかなさそうです。
こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-11143529071.html?frm=themeより引用させて頂いております。

