
異 例
以前あるTV番組で、「人間は年齢が高くなるほど時間の経過を早く感じるのは本当か?」 という実験をやっていました。
時計を見ずに、5分経ったと思ったらボタンを押す・・・という簡単なものでしたが、ものの見事に仮説が実証されていました。
私にとって12月下旬といえば、N響の〝第九〟を聴くのが毎年の恒例行事。
聴いたのは1年前だったのに、何だか数か月前に聴いた気がしてならない自分・・・思わず〝あの実験〟を思い出して、苦笑いしながら渋谷区神南の並木道を歩いてNHKホールに向かいます。
今年の指揮者は東ドイツ出身の巨匠、クルト・マズア氏。
彼の生演奏を聴くのは初めて・・・楽しみにしながら開演前にパンフレットをめくっていると、今まで見た事のない記述が。
指揮者・独唱歌手の紹介に続いて、例年通り合唱は国立音楽大学の学生さん・・・と、その下に 『合唱・東京少年少女合唱隊』 って書いてあるのです。
(えっ、第九に子供の合唱隊??)
少なくとも自分が過去聴いた第九で、子供の合唱隊が入った演奏・・・N響はもちろんCDでも記憶にありません。
一体どうなるの?・・・不安と期待が入り混じる複雑な気持ちの中、開演時間を迎えると合唱団が続々とステージ後方に入っていきます。
男性が上段を埋めると、次は女性・・・そして最後にお揃いの制服で身を包んだ少年少女合唱隊が、硬い表情で入場してきました。
向かって最前列左隅に着席する24名・・・全員が手に楽譜を持っています。
(おいおい、ホント大丈夫か?)
会場も少々ざわつき気味、ちょっぴり心の中に不安が膨らみかけたところで、クルト・マズア氏が入場・・・拍手が止むとすぐに演奏に入りました。
手すりにもつかまわずに身体を動かしてエネルギッシュに指揮をするマズア氏からは、82歳という年齢は全く感じさせません。
180cmを優に超す大きな身体から、迫力さえ伝わってきます。
音のキレが良い第1、2楽章。 そして私が大好きな第3楽章のストリングスの響きも素晴らしく、そして問題の第4楽章 『合唱』 へ・・・。
第3楽章までとは一変、少し遅めのテンポで落ち着いた雰囲気から、フィナーレへの盛り上がりはなかなかのモノ・・・素人耳の私が聴く限り、少年少女合唱隊 (多分パートはソプラノ?) が入ったことによる違いは感じられなかったものの、1年を締めくくるに相応しい良質の演奏でした。
結局全員が楽譜を開かずに歌い切った合唱隊のメンバーにとって、3,500人以上の聴衆を前にしたN響との協演・・・一生の宝になることでしょう。
帰宅して調べてみたら、マズア氏は過去にも子供の合唱隊を入れて演奏した実績があるとのこと。
こういう試み、次世代に芸術を引き継ぐためには良い手法かもしれません。
来年以降も是非続けて欲しい企画ですネ。
4回ものアンコールに応えた後、美人の第一ヴァイオリン奏者に手を引かせ 「やれやれ」 ってな感じで退場、聴衆の笑いを誘ったクルト・マズア氏。
・・・bravo !!
★ この少年少女合唱隊が加わった〝異例の第九〟・・・
本日(26日)正午よりNHKハイビジョンで、また大晦日31日午後8時
からNHK教育で放送される予定です。
お時間のある方は、お聴きになってみてください。
こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-10417769238.html?frm=themeより引用させて頂いております。

