褐色の弾丸

2009-09-18 07:07:07
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陸上競技の華・・・といえば、男子100m。 

マラソンもオリンビックの陸上最終種目として閉会式前にレースが行われるなど注目されますが、過去の金メダリストを覚えている方は意外と少ないのではないでしょうか?

オリンピックで4冠を達成したカール・ルイス、彼のライバルであったベン・ジョンソン、そしてモーリス・グリーン、アサファ・パウエルときて、昨年から圧倒的世界新を叩き出しているウサイン・ボルト・・・。

100mを制した選手は〝世界最速の男〟として、人々の記憶にその名を残しています。

その中に、私が子供の頃に見た東京オリンピックで〝褐色の弾丸〟と呼ばれ、圧倒的な強さを誇るスプリンターがいました。

 ボブ・ヘイズ

 ( Robert Lee “Bullet Bob” Hayes )

彼の名を未だに覚えているのは、当時 「人類で初めて10秒の壁を超えられる男」 として大きな期待がかかっていたからでした。

1960年、アルミン・ハリー選手(西独)が 「人類の限界」 といわれていた10秒0を記録してから、人々の注目はいつ、誰がこの壁を越えられるのか?・・・この一点に絞られていました。

そんな中、フットボールの奨学金で大学に進んだヘイズは、前年に米国内で100ヤード9秒1の世界新記録を出し、人類の限界を越える男として人々の期待を一身に背負って東京・国立競技場のトラックに立ったのです。

しかし残念ながら、彼にはあらゆる意味でツキがありませんでした。

決勝当日まで、東京は4日連続の雨。 当時のトラックは煉瓦を砕いて敷きつめたアンツーカーだったため地盤は緩く、しかもヘイズの走るレーンは第1コース・・・つまり、中・長距離ランナーが何人も走ってデコボコ状態。

そんな悪条件の中でも、ヘイズは快走! 10秒0の世界タイ記録で金メダルを獲得したのですが・・・実は、彼にとって決定的な不運がもうひとつあったのです。

              ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-ボブ・ヘイズ

                 <ボブ・ヘイズ sankei.jp.msn.comより

それは、タイムの計測方法でした。

それまでの公式記録は、3人の公式記録員が手動のストップウォッチで計測したタイムを採用していました。 この東京オリンピックでの手動計時は、それぞれ9秒9、9秒9、9秒8・・・すなわち 「9秒9の世界新記録誕生!」 のはずだったのです。

ところが日本が誇る時計メーカー・セイコーグルーブの技術の粋を集めた電子計時の正確性が高く評価され、この東京五輪から電動計時が公式記録として採用されていたのです。

日本の高度な精密技術が、彼の栄誉を阻んでしまった・・・という皮肉。

ヘイズはこの翌年プロフットボール選手としてダラス・カウボーイズに入団。

ワイドレシーバーとしてプロボウル出場3回、スーパーボウルにも2回出場し、史上初の〝金メダリストにしてスーパーボウル優勝リング獲得選手〟となりましたが、栄光はここまで・・・現役引退後は麻薬に手を出して服役生活も送るなど、決して恵まれた後半生とはいえませんでした。

そのヘイズが多臓器ガンにより59歳でこの世を去ったのが、2002年の今日・9月18日のことでした。

もし東京五輪が手動計時採用のままで、ヘイズが陸上競技史に 〝人類初の10秒の壁を破った男〟としてその名を刻んでいたら・・・彼の人生は大きく変わり、彼自身

「国中が(私のことを)忘れちゃったみたいだナ」

という寂しいコメントを残さずに済んだかもしれません。うー

これも歴史のイタズラ・・・といっては、あまりに切ないでしょうか?



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こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-10250063959.html?frm=themeより引用させて頂いております。