
迎 合
校内暴力や不登校、いじめなど、様々な難問を抱えた学校・教育現場は全国至る所にあるでしょう。
嘗てそれらの問題に立ち向かい、鎌倉市内の問題中学校を次々と立て直したスーパー教師がいらっしゃいます。
さぞゴツい身体をした体育会系の男性・・・かと思えば、然に非ず。
何と華奢な女性教師でした。
現在は教職を退職されていますが、自宅裏につくった 『湘南教育研究センター』 の副理事長として問題解決に日夜奮闘している80歳のスーパーおばあちゃん(失礼!)、
あや こ
鈴木 紋子 さん
の取材記事が、月刊 『致知』 5月号に掲載されていましたので、特に印象深かった部分を抜粋・編集にてご紹介させていただきます。
◇ ◇ ◇ ◇
赴任した中学校の中に、「校長死ね」 という落書きが町中に溢れているようなところがありました。
生徒指導をする先生が少なかったため苦労しましたが、悪いことをそのまま放置しておけない私は、生徒にあれこれ指導したのですが、それを見た年輩の先生が
「ダメダメ、指導しちゃ。 生徒たちに迎合していれば荒れないで済むのョ。」
と言ってきましたが、私は
「そんなことじゃ子供は育たないでしょう。」
と方針を崩すことはありませんでした。
他の先生たちはいつまで経っても迎合しない私に腹を立て村八分にされましたが、私自身はどこ吹く風でした。
第一、迎合には教育というものがなく、子供たちの人格は磨かれません。
生徒たちは朝も平気で遅刻してきます。 こんな中で過ごした彼らは一体どのように育つのだろうと考えると、指導せずにはおられないという思いでした。
当時、私は毎日2つのお弁当を持って学校に行くようにしていました。
その一つをお昼に食べ、夕方にもう一つを食べてから、不登校の子や非行少年の家を一軒一軒見て回るのです。
初めは心を塞いでいた子たちも、足繁く家を訪ね親身になって話を聞いていると、学校にも顔を見せてくれるようになっていきました。
また校内暴力をなくそうと、学年集会の時に生徒たちにこんなお願いをしました。
「皆さんの右手を出してください。 右手はペンを持つ〝勉強の手〟です。
その勉強の手で、左手に〝心〟と書いてください。
もしもお友達をぶちたくなったら、その心の手で右手を止めましょう。」
数日後、授業中に友達を殴っている生徒を見かけました。
「○○君、左の手はどうしましたか?」 と聞くと、彼はあぁ、そうか・・・と大人しく右手を引っ込めました。
この時に 「何してるの!」 なとど怒鳴ってはいけません。
どんな悪さをする子でも、必ず素直な心があるのです。
子供たちにも感情を害して、つい騒ぎたくなることがある。
その時に本人の気持ちを理解しようとせず、頭ごなしに怒鳴りつけてしまうから、子供は反発してしまうのです。
◇ ◇ ◇ ◇
「生徒への迎合に教育はない」・・・生徒に呼び捨てにされたり渾名で呼ばれ、「コミュニケーションが取れた、仲良くなった」 なんて喜んでいる教師たちに、この言葉はどう響くのでしょうか?
「そんなこといったって、今はもっと大変なんだ!」 と反論する教師もいるでしょうが、身体の小さな女性が31年間教師として荒れた学校を立て直し続けた実績の前には、言い訳にもなりません。
〝子供の可能性を信じる気持ち〟と〝粘り強さ〟が、生徒の心を開くのでしょうネ。
でもそれは学校の教師以上に、親にこそ必要なのかもしれませんが・・・。
鈴木先生は、高木書房から 『湘南のおばあちゃん 子供相談承ります』 という著書を出版されていますので、興味のある方は是非ご一読ください。
こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-11214244409.html?frm=themeより引用させて頂いております。

