ERな患者たち その2



今日ご紹介する患者さんは、私が入院中に出会った中で最も強烈な記憶を残した人物です。


20代後半の男性・Bクンは、週末の夕方に私の左隣に運び込まれてきました。


私も同じことを聞かれましたが、入室してくると看護師さんが 「お名前は? 生年月日は? 今日は何月何日? ここはどこだか分かる? どうしてここにいるのかナ?」 などと質問するんです。


私は正確に答えられましたが、時間をおいて2回聞かれたBクンの場合は自分の名前を含めて支離滅裂。


名前も生年月日も答えられず、ここがどこなのかも分からず、何でいるのかと聞かれた時は訳の分からないことを口走り・・・でも何故か2回とも 「今日は8月4日」 と同じ答え。


しかもこれ、1回目の後に正解を看護師さんから教えてもらったにもかかわらず。


漏れ聞こえてくる看護師さんたちの話を総合すると、行楽に向かう途中都内幹線道路でバイク事故に遭った模様。


運び込まれて検査した結果、脊椎を損傷していることが分かり、明日の手術が決まったらしいのです。


(まだ若いのに、後遺症が出なきゃいいけど。)・・・最初はそう同情した私は、その後エラい目に遭わされます。

とにかく痛がるんです、彼が。

「痛いっ! 痛てててて~!」などと言ってはベッドの上で大暴れ。

本当に脊髄損傷なんてしてるの?って疑うくらい。

何度か看護師さんに動くと身体に装着している計器類が外れるからジッとしているよう注意されたんですが、それでも言うことをきかない彼は、結局シーツを丸めたような布を使って手足をベッドの柵に縛り付けられてしまいました。

           ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-ベッド

ホッとしたのも束の間、B君の痛がり方はますますヒートアップ。


身体をよじりながら 「痛てぇよ~ 何とかしてょ~」 と嘆きっぱなし。

そのたび看護師さんが来て 「アナタが動くからでしょ!」 て叱ると1分くらいはシュンとしているんですが、すぐに元通り。


そのうち消灯時間が来て部屋が暗く静かになると、彼の声はますます通るようになり、しかもその内容もエスカレート?


「手をほどいてくれぇ~、 何でなんだよぉ~、 信じらんねェ~。」


なんてのはまだしも、静かにするよう注意しに来た看護師さんに向かって


「アンタはプレデターだ!」 (意味不明) とか
「オレはサダキチだァ」 (全く意味不明) そして揚げ句には
「ノコギリ持ってきてェ~。」 (それで何するの?)


などと喚き放題。


最初の頃はうるさくて仕方なかった私も、ここまでくると今度は何を言い出すのかとワクワクドキドキ・・・どんどん目が冴てきて眠れなくなってしまいました。


1回同部屋のオジサンが 「うるせぇゾ!」 って怒鳴ったんですけど、結局は何も変わらず、そのオジサンも諦めたみたいでした。


結局彼は一晩中呻きっ放し、私もそれに付き合う形で徹夜。ダメだぁ顔


そして朝7時。

ERゆえに談話室もテレビもないため、看護師さんが気を利かせてラジオをかけてくれたんですが、スイッチを入れてすぐにパーソナリティーが 「皆さん、おはようございます。」 って言ったんです。 するとBクン、


「はいっ、おはようございま~す! 痛ってェ~。」


ですって。 


そしたら室内には皆の笑い声が・・・一晩中呻いていたことでストレスがたまっていた室内が、思わず和んだ瞬間でした。


結局その後も全く勢いが衰えぬまま正午を迎え、彼は病室に運び込まれてから約16時間呻き続けて手術室へと連れて行かれ、その後私と会う事はありませんでした。


彼の 「痛てェ、やべェ、信じらんねェ!」 というあの呻き声、今でも私の耳に残っています。


でもBクンの場合・・・主治医が精密検査すべき場所は、脊髄以外にあるような気がするんですけどねぇ。うー


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こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-11074791992.html?frm=themeより引用させて頂いております。