
Last Message <2nd.>
「たった今、息子が息を引き取りました。」
Yさんのお母様から涙声で電話をいただいたのは、病院でお会いしてから僅か2週間後のことでした。
自宅に戻り、ご安置したYさんは大変安らかなお顔をされておられました。
「この子が望んだとおりにしてあげてください。」というお母様のお言葉を受け、私はYさんのご友人と連絡を取りながら、準備を進めました。
3日後に行われた告別式は、Yさんのご要望に従い、献花による無宗教葬形式に。
Yさんのご人徳の賜物でしょう、200名を超えるご会葬者が最後のお別れにおいでになりました。
Yさんが生前に「どうしても弔辞を読んで欲しい」と希望されていた3人の方々が、順に弔辞を読まれます。
(実は、病院での打ち合わせの際、Yさんに「もし3人の方に弔辞をお願いしたい・・・ということならば、直接Yさんからご本人に依頼されないと、遠慮されてしまう可能性がありますょ」と私がお話したところ、その翌日から一人ずつ連絡を取って病室に呼び出しては、直談判で弔辞の依頼をされたのでした。)
「ホントはオレ、弔辞読むなんてイヤだょ。でもなぁ、お前に直接頼まれたら、断れないじゃないかょ!」
嗚咽に声を詰まらせながらの、心のこもったお別れの言葉の数々・・・。
そして前もってご友人に編集をお願いしていたDVDで、在りし日のYさんの試合での活躍風景や、仲間と楽しそうに歓談している宴会シーンが大型スクリーンに映し出されると、式場内のあちこちですすり泣く声が・・・。
献花が終わり、祭壇のお花を柩一杯に会葬者全員の手で手向けていただき、いよいよご出棺の時間となりました。
「それではここで、Y様ご本人から、ご会葬の皆様に最後のお別れの言葉がございます。」
私のナレーションに「えっ?」と式場内がどよめく中、CDが静かに回り始めます。
(このメッセージを録音したのは、Yさんが昏睡状態に陥る前日でした。途切れ途切れに、呼吸を整えながら、時間をかけて吹き込んだYさんのメッセージを、ご友人が編集したものでした。)
「皆様、今日は僕の葬儀に忙しい中おいでいただき、ありがとうございました。
今日、弔辞を読んでくださった3名の方は、いずれも私の人生でかけがえのない方でした。
○○さん、△△さん、そして□□さん、無理なお願いをしてすみませんでした。」・・・
3人の方が弔辞を読んでくれると信じ切ったYさんのメッセージは、楽しかった思い出やご家族・仕事仲間への感謝の言葉と続き・・・苦しい息の中、最後は、こう締めくくられていました。
「皆さん・・・どうか・・・
ボクのことを・・・忘れないで下さい!
それでは・・・一足先に・・・行ってきます!」
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嗚咽とすすり泣く声だけが響き、深い悲しみに沈む式場から、柩は8名の親友により霊柩車に納められました。
「さよ~ならぁ!」 「ありがとう!」
満開の桜が眩しい昼下がり・・・多くのご友人が絶叫に近い惜別の声をかける中、霊柩車は物悲しいクラクションの音と共に、静かに火葬場へと進んで行きました。
車列を見送りながら、「Yさん、望んだ通りのお別れになりましたか? これで良かったでしょうか?」と問いかける私・・・。
しかしその答えを得ることは、残念ながら永遠にできません。
Yさん。
私は、病院のエレベーターのドアが閉まる瞬間に垣間見た貴方の笑顔と、そして最後の言葉を・・・決して忘れることはないでしょう。
どうか、どうか安らかにお眠り下さい。
・・・・・ 黙祷。
こちらの記事はhttps://ameblo.jp/warmheart2003/entry-10085889809.html?frm=themeより引用させて頂いております。

