恰 好

今日は、我が愛読誌・月刊『致知』7月号から、発行人・藤尾秀昭氏の巻頭エッセーを抜粋・編集にてお届けします。

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今月号のテーマ〝命は吾より作(な)す〟とは、運命は自分が作る、ということである。

自らの道を自ら切り開いてきた人は皆、命を吾より作したひとである。

10歳で丁稚奉公に入り、一代で大企業グルーブら創った松下幸之助さんは、その最たる存在である。

ある年の入社式で、松下幸之助ささんはこう訓辞している。

「君らな、僕が今から言う二つのことを守り通したら、松下電器の重役になれる。

一つは、いい会社に入ったと思い続けられるかどうかや。

 

入社したばかりの時はそう思っても、嫌な上司に出会ったり意に沿わない仕事をさせられてもなお、いい会社に入ったと心からおもえるかどうかは、すごく大事なことや。

もう一つは、社会人になってお金が一番大事と思ったらあかん。

もちろんお金も大事だが、お金はなくしても取り戻せる。

 

しかし、人生にはこりを失うと取り戻すのに大変苦労するものがある。
それは、信用や。 信用を大事にせなあかん。」

これに付言して、松下さんはこうも言われた。

「人間、9割は自分ではどうにもならない運命のもとに生きている。
その運命を呪ってはいけない。 

喜んで受け入れる。 すると運が良くなる。」

命は吾より作す心得を説いて含蓄深い。

       

〝命〟について、安岡正篤師はこう言っている。

「人間が浅はかで無力だと、いわゆる〝宿命〟になる。
 人間が本当に磨かれてくねると〝運命〟になる。
 即ち、自分で自分の〝命〟を創造することができるようになる。
 それを〝命は吾より作す〟という。」

卓見である。 

 

ではどうすれば人間を磨き、自分の命を創造できるのか。

古来、多くの先哲がそのヒントになる金言を残している。
ここに先哲の言葉を3つ添えておきたい。

一は『論語』より、「人の生くるや直(なお)し。」

人が生きていく上で最も大事なことは、素直であることだ・・・と孔子は教える。

人間性・個性というが、〝性〟の偏〝忄(りっしんべん)〟は、心が天地に対してすっくと立っていることを示している。

心が歪んだり捻じ曲がったりしていると人間性も個性も発揮できない。

性格が歪んだ人は人生も歪む、孔子が素直を重んじた所以である。

次に『易経』より、「性を尽くして以って命に至る。」

ここで言う〝性〟は天から授かったもの、持って生まれた能力のこと。
それを全て発揮し尽して天命に至ることができる、というのである。

これは命を吾より作す上で欠かすことのできない秀作だと言える。

多くの先達が様々な表現でこの大事を説いている。

坂村真民さんの詩にも、こういうのがある。

「なにごとも 本腰にならねば いい仕事はできない
 新しい力も うまれてはこない 本気であれ 本腰であれ」

最後に、趙州禅師の話。

弟子が名僧といわれた趙州に「大困難がきたらどうしますか」と問う。

趙州は一言、「恰好」 と答えた。
格好とは「よしきた」ということである。
 

人生に起きる「まさか」にヘナヘナとなってはいけない。
「よしきた」と応じる。

その姿勢こそ吾より命を作す根幹となる。 心したい。

 

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先達の言葉に素直に耳を傾け、実践したいものです。

 

 

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